WHO(世界保健機関)は、これからは、ソーシャルではなく、フィジカル・ディスタンシングにしましょう、と言いました。ソーシャルディスタンスとフィジカルディスタンスの違いとは?
ソーシャルディスタンスとフィジカルディスタンスの違い
結論から言うと、
- 内容に違いはない
- 言葉から想起する印象が違う
ということです。
「ディスタンス」とは「距離」のこと、「ディスタンシング」といった場合は、「距離を確保する」という意味になります。
「ソーシャル」は、「社会的な」という意味で、ソーシャルディスタンスは「社会的距離」と訳されています。
「フィジカル」は、「物質の、身体の、物理的な」といった意味で、フィジカルディスタンスは、「物理的距離」という意味になります。
ソーシャルディスタンスとフィジカルディスタンスの印象の違い
カタカナで書く外来語としてはピンと来ませんが、英語としては印象が次のように違うそうです。
- ソーシャルディスタンス:心理的なものも含む人と人との距離
- フィジカルディスタンス:身体的物理的距離
よって、ソーシャルディスタンスという言葉の先には、社会的孤立、民族や集団の違いでの距離感などが想起され、親しい家族との関係さえも断たなければならないと考える人も出てくる可能性があるそうです。
言葉の力は、精神面での健康に影響を及ぼし、免疫力の低下など身体的健康への悪影響や、社会的な不安定を引き起こす可能性もあります。
フィジカルディスタンスの意味するところ
WHOが、フィジカルディスタンスという言葉で伝えたいメッセージは、
- 社会的なつながりを保ちながら、物理的な距離を取ろう
ということです。
We’re changing to say physical distance and that’s on purpose because we want
people to still remain connected.
出典:who
医療以外のソーシャルディスタンス
ミリアムウェブスター英語辞典によると、医療の言葉としてのソーシャルディスタンシングが最初に使われたのは、2003年のことです。引用元:merriam-webster
2003年は、SARSが流行した時期です。
それよりも前に、社会学では、ソーシャルディスタンスという言葉が使われていました。
社会学では、階級、民族や人種、性別、セクシャリティなどによる社会のグループ別の距離を意味します。これは、親近感や親密さの尺度で、いわば、心理的な距離感です。
また、1963年に「proxemics プロクセミクス、近接学、近接心理学」という言葉を作った、アメリカの文化人類学者、エドワード・ホール氏は、個人の対人距離を4つに分類し、そのなかのひとつに、ソーシャルディスタンスsocial distanceがあります。このソーシャルディスタンスは、知らない人と会うときの距離のことで、1.2m~3.5m の物理的な距離です。
参考:study.com
まとめ
医療分野のソーシャルディスタンスとフィジカルディスタンスは、内容は同じである。ソーシャルディスタンスというと、意図せずして心理的な意味を含む社会的な人と人との距離感をも想起させるが、そこは逆につながりを保ってほしいところであり、代わりに、単に身体的物理的な距離を意味するフィジカルディスタンスという言葉をWHOは使うことにした。
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